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セミナーレポート

2026/05/26

 なぜ人は辞めるのか ~健康経営×従業員体験で読み解く、これからの組織づくり~

日本経済新聞社 人財・教育事業ユニット主催、株式会社ルネサンス共催の本ウェビナーでは、「健康経営」と「従業員体験」をテーマに、人材が定着し活躍する組織のあり方について議論が行われました。
登壇したのは、株式会社ルネサンス 執行役員の樋口氏と、社会保険労務士の岩田氏です。

「働く理由」と「辞める理由」は違う

ー まずは、なぜ人が辞めるのかという点について、健康経営の視点からお話しいただけますか。

樋口氏
はい。結論から言うと、企業の魅力をどうつくるかという話になります。よく「なぜ働くか」と聞くと、多くの人は「お金」と答えます。でも、辞める理由は違うんですね。

ー 確かに、待遇だけで会社を選んでいる印象はあります。

樋口氏
そうですね。ただ、辞める理由として多いのは、人間関係や働きにくさ、納得感の欠如といったものです。

つまり、

働く理由は「条件」、辞める理由は「体験」というギャップがある。

ここを企業が理解しているかどうかが重要です。


「家族に勧めたい会社か」という問い

樋口氏
私はよく企業にこう問いかけます。「あなたは自社を家族や友人に勧めたいですか?」と。

ー かなり本質的な問いですね。

樋口氏
ある企業では、100人中3人しか手を挙げなかった。これはかなり厳しい状態です。

逆に、多くの社員が手を挙げる会社は、“人が資本になっている会社”と言えると思います。


健康経営とは何か

ー 改めて、健康経営とはどういうものなのでしょうか。

樋口氏
簡単に言えば、

経営の中に健康を組み込むことです。

例えば「タバコは体に悪い」というのは一般論ですが、健康経営では「なぜ自社では禁止するのか」を経営として考える。

つまり、会社ごとに100通りの健康経営があるわけです。


健康は「生産性の前提」になっている

樋口氏

いま変わってきているのは、労働の質が健康の質に依存するという点です。

  • 睡眠不足によるミス

  • 不調による判断力低下

  • メンタル不調によるパフォーマンス低下

こうしたものが、企業の品質や安全に直結する。

ー つまり健康は福利厚生ではなく、経営課題ですね。

樋口氏
その通りです。


従業員体験から見た「離職の正体」

ー 岩田さん、現場ではどのように離職が起きているのでしょうか。

岩田氏
人は突然辞めるわけではなく、小さな違和感の積み重ねで辞めます。

ー 例えばどのような?

岩田氏
たとえば、

  • 入社初日に誰もフォローしない

  • 相談先が分からない

  • 上司が忙しくて話せない

  • 給与ミスがある

こうした“小さなズレ”が蓄積して、エネルギーがゼロになると辞める。


顧客体験と同じ発想が必要

岩田氏
面白いのは、企業は顧客体験にはすごく投資するんですよね。

ー 確かに、UI改善やサポート体制などは徹底しますよね。

岩田氏
でも、従業員体験は後回しになる。ここに大きな構造的問題があります。

私は、人事施策は「プロダクト」だと思っています。顧客にするのと同じレベルで、従業員体験を設計すべきです。


「良い制度」ではなく「嫌な体験」を潰す

岩田氏


人事がやりがちなのは、新しい制度を作ることです。

  • ユニークな休暇制度

  • 新しい評価制度

でも、それより重要なのは、

従業員が嫌だと思っている体験(ペイン)を取り除くこと

です。


組織は全員で変えるもの

ー 組織を変える主体は誰になるのでしょうか。

岩田氏
全員です。経営、管理職、現場すべて。
制度だけ変えてもダメですし、経営だけ変わってもダメ。最終的には風土の問題になります。

樋口氏
私も同じ考えです。健康経営の観点でも、風土が最も重要です。


課題は「見えない」こと

樋口氏

ただ難しいのは、離職理由は形式知化されないことです。

ー 確かに、退職理由は表面的なものになりがちですね。

樋口氏
そうなんです。本音は出てこない。
だからこそ、

見えない課題をどう可視化するか
が重要になります。


働き方の柔軟性が打ち手を増やす

岩田氏


もう一つ重要なのが、働き方の柔軟性です。

時間や場所に縛られない働き方がある企業は、課題への打ち手が増えます。

これはOSのようなもので、常にアップデートが必要です。


健康経営は「3.0」に進化している

ー 健康経営は今後どう進化していくのでしょうか。

樋口氏
いまは「3.0」の段階に入っています。

  • 1.0:身体・メンタルの健康

  • 2.0:エンゲージメント

  • 3.0:社会的な健康(関係性・働きがい)

岩田氏
かなり広がっていますね。

樋口氏
はい。今後は雇用関係だけでなく、

  • 副業・兼業

  • フリーランス

  • 高齢者

など、企業に関わるすべての人の健康がテーマになります。


まとめ:企業は「体験」を設計せよ

議論を通じて見えてきたのは、次の3点。

  1. 離職は「体験の積み重ね」で起こる

  2. 健康経営は「働きやすさ」と「働きがい」の設計

  3. 組織は制度ではなく「風土」で決まる

そして何より重要なのは、

従業員の小さな違和感に向き合い続けること

となる。

企業にとって人材は「コスト」ではなく「資本」。
その価値を最大化することこそが、これからの経営に求められている。

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